『 遠くて、近い、われらの神 』

2020年6月7日(日)
イザヤ40:12-17,ヨハネ14:8-17,Ⅰテモテ6:11-16

旧約聖書を順番に読んでいて感じるのは、神と人との距離感が少しずつ変化していくことだ。創世記では「近い」。すぐ近くで、息遣いが聞こえるようなところにおられる神が描かれる。ところが出エジプト記になると、神はモーセを通してのみご自身を啓示される。しかしまだ「雲の柱・火の柱」すなわち「部族神」のようなかたちで、民の「そばに」おられる。

ところがイスラエルが諸外国の支配を受け、捕囚などの体験を積む初期ユダヤ教の時代になると、遠く離れた「宇宙の創造主」というユニバーサルな神として描かれるようになる。今日の旧約の箇所・イザヤ書の言葉などもそのひとつである。

その「遠く離れた神」が、他でもない「このわたし」に目をとめて下さる…そのような信仰の視点の大切さを信仰は示してくれる。「自分中心の世界」ではなく、「世界の中の自分」という視点である。

イエス・キリストはそのような信仰を抱いて生きる道を示された。一羽のすずめをも見つめられる神のまなざしを感じ、生かされている自分の命を感謝して生きる…それがイエスの語られた福音の本質のひとつである。

Ⅰテモテで、パウロは「唯一の主権者、不死の存在、近寄り難い光の中に住まわれる、誰一人見ることができない方」と「崇高な神」について語る。はたして神はそのような「近寄り難い存在」なのだろうか?

ヨハネ福音書でイエスは「私を見た者は神を見たのである」と言われた。「父子同質」の教義の根拠となる言葉でもあるが、少し違う受けとめ方をしてみたい。

イエスが神を「父」と呼ばれたのはよく知られることであるが、ユダヤ教でもそう呼ばれていた。しかしユダヤ教のラビとイエスとでは明らかな違いがあった。ラビたちの「父」が父権制社会における権威者としての「御父上さま」という呼称であったのに対し、イエスのそれは「アッバ=トウチャン」という幼な子の親愛の情の言葉である。それは「父子同質」という難しい真理を表すというよりも、神との「近さ・親しさ」を表す呼び方なのである。

「神さまは偉大な、崇高な方である。しかし決して近寄り難い存在ではない。『アッバ』という呼びかけに応えて下さる、親しみ深い存在なのだ…」。「アッバ」という呼びかけを通してイエスが示された神への信仰、それは「遠くて、近い、われらの神」ということなのではないだろうか。

遠く離れていることは、関わりが薄くなり悲しむべきことだ…と私たちは考えてしまう。しかし遠く離れていることは、悪いことばかりではない。遠く離れているからこそ見えることもある。宇宙飛行士たちが帰ってきて、異口同音に語るのが宇宙から見た地球の美しさ・すばらしさである。そして「にもかかわらず」互いに争っている人間の愚かさ、平和の大切さである。遠く離れているからそれが見える、感じられるのである。

遠く離れているからこそ感じることがある…神さまも同じなのではないか。神は人間の手の届かない離れたところでわたしたちを見つめておられる。神は人の手の内にはおられず、人は神を思うがままにコントロールすることはできない…その意味で「神は遠い」。

しかしその「遠さ」は、神と私たちとの「断絶」を意味するのではない。遠く離れた神が「近くにおられる」。私たちと共に、私たちの内におられる…その心の距離の近さをイエスは教えて下さった。イエスを知るとき、神を知り、「私たちはひとりではない」と信じて生きることができるのだ。

♪ From a distance
(遠くから見れば/ナンシー・グリフィス)

From a distance the world looks blue and green
遠くから見れば この世界は青と緑に見える

And the snowcapped mountains white
そして雪に覆われた山は白く

From a distance the ocean meets the stream
遠くから見れば 海と川は出会い

And the eagle takes to flight
そしてワシは飛び立とうとしている

From a distance there is harmony
遠くから聴けば そこにはハーモニー

And it echoes through the land
それは大地に響き渡る

It’s the voice of hope,
それは 希望の声     

It’s the voice of peace
それは 平和の声

It’s the voice of every man
それは すべての人の声

From a distance we all have enough
遠くから見れば みんな満ち足りて

And no one is in need
困ってる人はいない

There are no guns, no bombs, no diseases
そこには銃はなく 爆弾も 病気もなく

No hungry mouths to feed
そして飢える人もいない

From a distance we are instruments
遠くから聴けば 私たちは楽器

Marching in a common band
同じバンドに加わり 練り歩く

Playing songs of hope,
希望の歌を奏でながら

Playing songs of peace
平和の歌を奏でながら

They’re the songs of every man
それはあらゆる人々の歌

God is watching us,
神さまは見ておられる

God is watching us
わたしたちを見ておられる

God is watching us from a distance
はるか遠くから見ていて下さる

From a distance you look like my friend
遠くから見れば あなたは友だちに見える

Even though we are at war
たとえ私たちが争っていても

From a distance I just can not comprehend
遠くから見れば  私は理解できなくなる

What all this fight is for
全ての戦いが何のためなのか

From a distance there is harmony
遠くから聴けば そこにはハーモニー

And it echoes through the land
それは大地に響き渡る

It’s the hope of hopes,
それは希望の中の希望

It’s the love of loves
それは愛の中の愛

It’s the hea-rt of every man
それはあらゆる人々の心

God is watching us,
神さまは見ておられる

God is watching us
わたしたちを見ておられる

God is watching us from a distance
はるか遠くから見ていて下さる

2020-06-07 | Posted in | Comments Closed